Press Release May 05, 2025
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日本文化がフランクフルトに集結: 映画とカルチャーの交差点へ
第25回ニッポン・コネクション映画祭全プログラム
第25回ニッポン・コネクション映画祭のプログラムが発表されました。5月27日から6月1日まで、世界最大級の日本映画プラットフォームであるニッポン・コネクション映画祭は、ドイツ・フランクフルトにて25周年を祝います。この6日間、来場者は日本の映画と文化シーンにたっぷりと浸ることができます。映画祭では、最新の日本映画67本のプレミア上映を含む、約100本の短編・長編映画が、フランクフルト市内10カ所の会場で上映されます。さらに、60名を超える映画制作者やアーティストが日本から来場し、作品を観客に直接紹介します。加えて、約70のカルチャーイベントと、飲食や手工芸品の屋台が立ち並ぶ入場無料の日本マーケットも開催され、映画祭を一層盛り上げます。すべての作品情報やイベント詳細、チケット情報は、公式ウェブサイトNipponConnection.comにてご確認いただけます。
今年の映画祭のラインナップは、現在の日本映画界を幅広く紹介する多彩な内容となっています。映画祭は5月27日19時にKünstler*innenhaus Mousonturmにて、前田哲監督によるコメディ『九十歳。何がめでたい』で開幕します。本作は、引退後に再び脚光を浴びることになる成功した作家を描いたユーモラスな作品です。安田淳一監督のチャーミングなタイムトラベル・コメディ『侍タイムスリッパー』も、すでに日本国内で多くの観客を魅了しており、楽しい時間を提供してくれるでしょう。国際的にも高い評価を受けた2本のドラマ作品として、奥山大史監督の青春映画『ぼくのお日さま』と、五十嵐耕平監督による繊細なドラマ『SUPER HAPPY FOREVER』がドイツ初上映されます。また、ジャンル映画も健在で、 今年も数々の作品がプログラムに登場します。井上森人監督による奇想天外なB級映画の逸品『温泉シャーク』や、短編作品プログラム『Nippon Shorts: Seeking the Bizarre』などがラインナップに加わっています。ニッポン・アニメーション部門では、片渕須直監督の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』や、押山清高監督による日本アカデミー賞受賞作品『ルックバック』が再び大スクリーンに帰ってきます。アニメーション映画制作会社、スタジオポノックによる『ちいさな英雄』では、バラエティ豊かな3本の短編アニメーション作品が紹介されます。ドキュメンタリー作品では、北日本の先住民族文化を描いた『アイヌプリ』(福永壮志監督)、日本演劇界を描いた『浮草』(モハメド・ガネム監督)、そして消えゆく伝統染色技術を追った『青い記憶』(ヨシダシゲル監督)など、多彩な日本文化を掘り下げます。今年の映画祭は、「執着 - 情熱から狂気まで」を重点テーマとし、様々なかたちの「執着」という現象を多角的に探ります。本特集はKulturfonds Frankfurt RheinMainの支援を受けています。
25周年を記念し、ニッポン・コネクションでは、映画祭の歴史を振り返るトークイベントと、アーティストRobert J. Klingsによる展覧会を開催します。展覧会では、ニッポン・コネクションでの数々のピンク色の瞬間を描いた水彩スケッチが展示されます。さらに、映画評論家であり著者でもあるDr. Jasper Sharpによる、過去25年間の日本映画における最重要作品についての講演も行われます。回顧特集「ターニングポイント ー 1990年代の日本映画」では、ニッポン・コネクションの創設のきっかけとなった日本映画史の重要な10年間に焦点を当てます。Kino des DFF – Deutsches Filminstitut & Filmmuseumでは、三池崇史監督による終末的アクション・スリラー『DEAD OR ALIVE 犯罪者』、庵野秀明監督の劇場用映画デビュー作『ラブ&ポップ』、是枝裕和監督の詩的なドラマ『幻の光』などが上映されます。
第25回ニッポン・コネクション映画祭の特別ゲストは、背景美術などを担当し、美術監督を務める林孝輔氏です。林孝輔氏には、KYOCERA Document Solutionsの協賛によりニッポン・ライジングスター賞が授与されます。映画祭期間中には、ギャラリストのStefan Riekeles氏との対談を通じて、林孝輔氏の創作活動の舞台裏について詳しく紹介する予定です。さらに、来場が予定されている著名な日本の映画関係者には、山下敦弘監督(『化け猫あんずちゃん』『どんてん生活』)、豊田利晃監督(『次元を超える』『ポルノスター』)、瀬田なつき監督(『違国日記』)、宇賀那健一監督(『ザ・ゲスイドウズ』『みーんな、宇宙人。』)、古賀豪監督(『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』)、甫木元空監督(『BAUS 映画から船出した映画館』)、酒井麻衣監督(『チャチャ』)、そして奥山大史監督(『ぼくのお日さま』)らが名を連ねています。
日本文化を間近に体験できる多彩なカルチャープログラムも、当映画祭の大きな魅力となっています。国際的に活躍する音楽ユニットチャラン・ポ・ランタン、ガールズロックバンドЯeaL、ジャズアンサンブルKOKO Trio、著名なピアニスト石井琢磨氏、シンガーNILOによるコンサートでは、クラシックからJ-POP、ロックまで幅広いジャンルの音楽を楽しめます。特別イベントとして、ハンブルク発のMario Kart Livebandが登場し、伝説的なビデオゲーム「マリオカート」を大スクリーン上で名曲とともにライブ演奏するパフォーマンスも行われます。Produktionshaus NAXOS前では、ミニコンサートや、アーティストこだまこずえ氏によるライブペインティング、ラジオ体操など、無料の野外イベントも開催され、気軽に立ち寄ることができます。今年も、参加型ワークショップが多数開催されます。日本の紙編み、能面の絵付け、マンガの作画、お守り作りなど、様々な体験が楽しめます。さらに、人気のテイスティングイベントや料理教室も欠かせないプログラムとして登場します。講演では、日本文学の翻訳に関するテーマや、北日本旅行のおすすめ情報について紹介されます。2025年大阪・関西万博(EXPO 2025)に関連して、ドイツ館のライブ配信ツアーも実施予定です。ニッポン・キッズ・プログラムでは、子ども向けに、アーティストこだまこずえ氏によるグリーティングカード作りのワークショップ、和菓子作り体験教室、さらには合田経郎監督による人形アニメーション『こまねこのかいがいりょこう』の上映など、充実したプログラムが開催されます。
映画祭の上映およびイベントは、映画祭のメイン会場であるKünstler*innenhaus MousonturmおよびProduktionshaus NAXOSの2ヶ所に加え、Cinéma Arthouse Kino、Kino des DFF – Deutsches Filminstitut & Filmmuseum、Mal Seh’n Kino、Pupille – Kino in der Uni、Internationales Theater Frankfurt、Saalbau Bornheim、NaxosAtelier、NAXOS Galerieの8つの会場で開催されます。
全プログラムおよびチケット情報は、映画祭公式ウェブサイトNipponConnection.comにてご覧いただけます。
映画プログラムの詳細について
ビジュアルが際立つアートハウス映画
ドラマからコメディ、ロマンスに至るまで、日本の映画制作者たちはその語り口と独創性を常に発揮しており、特にアートハウス作品において顕著です。甫木元空監督による『BAUS 映画から船出した映画館』では、2014年に30年の歴史に幕を下ろした伝説的な東京の映画館「吉祥寺バウスシアター」の実話に基づく物語が描かれます。本作のヨーロッパプレミア上映には監督が登壇予定です。佐向大監督は、ユーモアと軽妙なタッチで日本の学校制度を多角的に描いた『中山教頭の人生テスト』の世界初上映を本映画祭で迎えます。吉田大八監督の『敵』は、引退した文学教授が静かな余生の中で、謎の敵への恐怖に取り憑かれていく様子を描いています。大九明子監督の『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、優れた若手俳優たちを起用し、喜びと悲しみ、ロマンスと悲劇が交錯する雰囲気豊かな文芸作品です。森ガキ侑大監督の『愛に乱暴』は、結婚生活の崩壊に直面した女性の心理を描いた皮肉なスリラーコメディで、閉塞感のある心理描写が特徴です。
ジャンル映画の魅力 — 黒沢清特集
今年の映画祭では、日本のジャンル映画も充実したラインナップを誇ります。特に、2016年にニッポン名誉賞を受賞した影響力のある監督、黒沢清の作品が4本上映されます。最新作『Cloud クラウド』は、サスペンス要素を含む冷静な観察劇から、崩壊寸前の不条理な世界を描くスリラーへと展開していきます。また、黒沢監督自身が1998年に手がけた同名スリラー『蛇の道』の、日仏共同製作によるリメイク版も上映されます。映画祭では、オリジナル版とリメイク版の両方が上映される予定です。さらに、回顧上映の一環として、1999年に公開されたドラマ『カリスマ』も再びスクリーンに登場します。主演は役所広司で、謎めいた比喩的な語り口が特徴の本作は、カルト的な人気を誇る黒沢清監督の代表作の一つとされています。
日本のインディペンデント映画
ニッポン・ヴィジョンズ部門では、インディペンデントで制作された注目の作品が多数上映されます。伊地知拓郎監督のドラマ『郷』は、同調圧力と競争社会に生きる日本の若者たちのリアルな姿を繊細に描いた作品で、ヨーロッパプレミアには監督が登壇予定です。近藤亮太監督のホラー映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』では、若者が行方不明になった兄の謎を追う姿が描かれます。この長編デビュー作もヨーロッパプレミアとして、監督の登壇が予定されています。インディペンデント映画界で注目の宇賀那健一監督による悲喜劇的なエピソード映画『みーんな、宇宙人。』は、困難な時代においても人間の善意を信じることの大切さを思い出させてくれます。また、同じく宇賀那監督の型破りなパンク・コメディ『ザ・ゲスイドウズ』も上映されます。草場尚也監督の『雪子 a.k.a.』は、小学校教師の雪子がヒップホップとラップへの情熱を通じて、不安や恐れに立ち向かう姿を描いています。このほかにも、ニッポン・コネクションでは将来有望な若手監督による短編映画プログラムが多数紹介されます。
感動的なドキュメンタリー映画
ニッポン・ドックス部門では、今年も心を打つドキュメンタリー作品が多数上映されます。5月27日には、NAXOS Kinoにて、湊寛監督による『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』が上映され、映画祭の幕を開けます。この作品は、プロレスに馴染みのない観客の心にも響く、魅力と共感に満ちたアウトサイダーの物語を描いています。また、竹林亮監督は、日本の児童養護施設を題材にしたドキュメンタリー『大きな家』を本映画祭でドイツ初上映し、登壇して自ら紹介します。さらに、熊谷博子監督の『かづゑ的』では、ハンセン病を患いながらも強い意志を持ち続けた宮﨑かづゑの人生が描かれます。本作はインターナショナルプレミアとして上映され、監督も登壇予定です。
戦後80周年
2025年は第二次世界大戦終結から80年の節目となります。これを機に、ニッポン・コネクションでは、メディアパートナーであるhr INFOの協力のもと、原爆投下という悲劇が芸術においてどのように表現されてきたかをテーマとしたパネルディスカッションを開催します。さらに、塚本晋也監督による反戦ドラマ『ほかげ』、稲垣浩監督の1943年の作品『無法松の一生 』が上映されます。『無法松の一生』は山崎エマ監督が同作の歴史的背景を描いたドキュメンタリー『ウィール・オブ・フェイト~映画『無法松の一生』をめぐる数奇な運命~』とともに上映され、稲垣作品を歴史的な文脈で読み解く内容となっています。
国際審査員と各賞について
当映画祭では、ニッポン・ヴィジョンズ部門において2つの審査員賞が授与されます。今年の国際審査委員には、本映画祭で新作『違国日記』を発表する瀬田なつき監督、チューリッヒのFilm Verleih Gruppeのトーマス・ヴァルトナー氏、そしてギリシャの映画評論家でAsian Movie Pulseの代表、パナヨティス・コツァサナシス氏の3名が名を連ねています。これらの審査委員によりニッポン・ヴィジョンズ部門の最優秀作品が選出され、第15回ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞が授与されます。受賞作品には日本映像翻訳アカデミー(JVTA)より字幕制作が無償で提供されます。また、審査委員により第2回ニッポン・ストーリーテリング賞が選出され、最優秀脚本作品にStorymaker Agentur für Public Relationsの提供により、賞金1,000ユーロが授与されます。さらに、観客によって選ばれる観客賞も3部門で授与されます。フランクフルトに本社を置くメッツラー銀行は、第20回目となるニッポン・シネマ賞のスポンサーを務め、賞金4,000ユーロが授与されます。第11回ニッポン・ヴィジョンズ観客賞には、フランクフルトにある日本文化普及センターの支援により、賞金2,000ユーロが授与されます。加えて、最優秀ドキュメンタリー作品に贈られる第6回ニッポン・ドックス賞には、映画祭より賞金2,000ユーロが提供されます。
映画祭について
日本映画祭「ニッポン・コネクション」は、NPO法人 Nippon Connection e.V.によって運営されており、約100名のボランティアを中心としたチームによって組織されています。また、ヘッセン州科学研究芸術文化大臣のティモン・グレメルス氏、フランクフルト市長のマイク・ヨーゼフ氏、および在フランクフルト日本国総領事館の後援を受け、開催されています。2000年の映画祭発足以後、日本映画における世界最大のプラットフォームへと発展し、2024年には約19,000人の来場者を記録し、ヘッセン州で最も観客動員数の多い映画祭となりました。